分配の遅れが問題になっている「みんなで大家さん」(以下、みん大)。
日経新聞がリスク説明の不十分さを指摘する記事を掲載しました。
では、リスク説明が十分であれば、みん大事件は防げたのでしょうか?
日経記事を紹介しながら、本件の根底に潜む問題を考えます。

根本的な問題があります!
ソシャレン、クラファン、すべての業者のリストです。

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みんなで大家さん事件の根本原因は?
擁護するつもりはゼロです
最初に明言しておきますが、僕はみん大を擁護する気も、肩を持つ気もまったくありません。
むしろその逆です。
みん大の一件で不動産特定共同事業のイメージ、さらには流れ弾的に不動産クラファンのイメージまでもが大きく毀損された。
みん大には怒り心頭で、懲役100年の実刑でも課してやりたい気持ちです。
ただ、それはそれ、これはこれとして、リスク説明だけで本当に事件を防げたのか?
日経報道に疑問を持つ次第です。
プチ解説 不動産特定共同事業とは?

どんな報道だったの?
記事は9月12日に日経電子版に掲載されました。
会員限定記事なので直接の引用は差し控えますが、以下に内容を紹介しつつ僕の考えを述べます。

論理的思考力の欠如
開発造成で分配が安定?
みん大のシリーズ成田案件に手を出してしまった人は2種類に分かれます。
一つはリスクがありそうだと感じつつ、イケ~っ!で投資した人。
もう一つはリスクにまったく気づかず、安全だと思って投資した人です。
- リスクに薄々感づいていた人
- リスクにまったく気づかなかった人
日経の記事では後者に該当する男性が紹介されています。
この男性は「土地を開発、造成するなら分配が安定している」と考え、同案件に400万円を出資したとのことですが。
みなさん、おかしいと思いませんか?
土地を開発造成だから分配が安定。
本当にそうなのでしょうか?
開発、造成段階では費用が発生するだけで分配原資は生まれません。
開発、造成が終わり土地を売却して初めて利益が出るのであり、安定とはほど遠いです。
なぜ安定だと思ったのか?
プチ解説 案件とは?
プチ解説 分配とは?
プチ解説 分配原資とは?
そもそも案件を理解できているのか?
それ以前に成田では取得した土地をグループ会社に貸し、グループ会社が払う賃料で分配を行います。
この男性はそれを理解できていたのでしょうか?
仮に理解できていたとして、グループ会社は借りた土地で開発事業を行うのみで、その間は利益は生まれません。
利益は生まれないのに賃料を払い続ける。
なぜそれが安定的に継続可能だとこの男性は考えたのか?
失礼ながらこの男性、論理的思考力がいささか足りないように感じます。
成田市が開発許可だから安心?
男性は「成田市が開発許可を出しているので安心できる」と思ったとも語っているのですが。
これもいささか理解に苦しみます。
行政は開発に必要な条件を満たしているかをチェックするだけで、開発の成否まで審査するわけではありません。
開発の成否まで審査し、成功するものにだけ許可を出しているならば、住宅の売れ残りなんて出るわけないじゃないですか。
そもそも、市役所の職員に不動産開発の成否を判断する知見などありません。
そんな判断ができるなら、大手ゼネコンからヘッドハンティングされているでしょう。

公務員は商売素人。
シリーズ成田が低リスク?
記事はシリーズ成田のパンフレット内の図表を問題として取り上げています。
パンフレットではシリーズ成田が投資信託やREITよりも低リスクで収益性が高いとされていたそうです。
これは明らかに事実に異なるので問題です。
優良誤認にあたるのではないかと思います。
ただ、シリーズ成田は開発プロジェクトが成功して売却までいかないと利益が出ない仕組みです。
それで低リスクなワケがないって、ちょっと考えれば分かる話ではないかと。
残った土地の価値を説明?
記事に登場した弁護士は、次の2点について説明がないことを問題としています。
- 成田プロジェクトが失敗する確率はどの程度か?
- 失敗した場合、残された土地の価値はいくらか?
前者について、業者は勝算があると見込んでプロジェクトを行っています。
失敗する確率が高いと思うなら手を付けていないわけで、確率を出させること自体が無意味です。
失敗する確率が85%で業者が開発をスタートするとこの弁護士は思っているのでしょうか?

確かに…
後者についてはGoogleマップを見れば一目瞭然、失敗したら残されるのはただの荒れ地です。
ただの荒れ地にろくすっぽ価値がないことなど誰でも分かるでしょう。
それが分からない、いや、考えようとしない、そこまで考えを至らせなかった人が手を出してしまったのかもしれません。
制度の見直しは急務
なお、この弁護士はシリーズ成田のような大規模開発案件を不特事業として扱って良いのか?
不特法での規制が必要なのではと提言しています。
これについては全面的に同意します。
そもそも古民家再生や賃貸住宅など、世間一般に言われる不動産を想定して作られたのが不動産特定共同事業です。
それが現状ではシリーズ成田や海外案件、果てはうなぎの養殖にまで乱用されています。
制度、規制の見直しは急務でしょう。
基本的投資知識の欠如
元本保証じゃない
冒頭の男性は「出資金は5年後に返ってくるので、貯金よりも利回りがよく生活の足しになる」とも語っています。
つまり、元本は必ず返ってくる、貯金相当だと考えているわけですが。
元本が必ず返ってくる保証が一体どこにあるのか?
投資商品に元本保証がないのは基本中の基本の常識です。
最低限の知識すらないのに投資に手を出してしまった。
そこは本当に残念に思います。
プチ解説 元本とは?

手を出すべきじゃなかった…
読解力の欠如
元本の安全性を強調
記事はパンフレットが元本の安全性を強調している点を問題視しています。
具体的にはパンフレットの以下の文言です。
- 元本の安全性を重視した資産運用
- 元本の安全性を高め、魅力ある利益分配金を実現した
日経はこの文言のどこが問題だというのでしょうか?
安全性を重視した、安全性を高めたと書いているだけです。
安全だなんて一言も書いていません。
「重視した、高めた=100%安全」ではない、普通の読解力があれば分かる話です。
これを読んで「安全性が高いんだ!元本は必ず戻ってくるんだ!」と思う人がどうかしています。
FAQに明記されている
記事によるとシリーズ成田のFAQには以下の内容の記載があったそうです。
Q:元本保証はあるか?
A:元本保証は出資法で禁止されている
ちゃんと書いてますよね、元本保証じゃないって。
冒頭の男性はこのFAQを読んで、なぜ5年後に必ず返ってくると思ったのか?
読んでなかった、もしくは読んでも保証じゃないと理解できなかった。
もしそうであれば、この点については本人の問題でしょう。
また、以下の記載もあります。
対象不動産の評価額が下がった場合でも、20%以内ならば元本への影響はない
これもちゃんと書いてあるじゃないですか。
影響がないのは20%までだと。
それはつまり、20%を超えると影響があるということです。
日本語を普通に読めば、それ以外の解釈はありえません。
それとも「20%を超えると影響がありますよ!」と書かないと分からないとでも言うのか?
その程度の読解力では、どれだけリスク説明を充実させても引っかかるでしょう。
教育の見直しが必要
現状には問題がある
冒頭で申し上げたように僕は超アンチみん大です。
みん大には腸が煮えくり返っています。
また、シリーズ成田に限らず説明は充実するに越したことはありません。
さらに、登場した弁護士が指摘する通り、現状の不特法が不十分であることは事実です。
みん大投資家に欠けていたもの
とは言え、それがみん大問題の最大の原因だとはどうしても思えない。
根本的な原因は、論理的思考力、基本的投資知識、読解力が不十分な状態で投資している国民がいることだと思います。
今のままで良いのか?
今後の日本において老後を年金だけに頼ることはできません。
すべての国民にとって、投資による資産形成が必須となります。
それなのに、投資に必要な論理的思考力、基本的投資知識、読解力が欠如した状態で投資をさせて良いのか?
そんな状態で社会に出してしまって、出された国民は幸福に生きていけるのか?
日本を投資必須の国にするのであれば、適切な投資判断ができる国民を育成しなければなりません。
投資必須の国にふさわしい教育への見直しが必要ではないでしょうか?

丸腰で放り出される国民が不幸です!
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