ソーシャルレンディングの歴史から教訓を得るシリーズ。
今回は52億円の被害を生み出したトラストレンディング事件を振り返ります。
ネットが発達した情報化社会における、情報の扱い方の難しさを突き付けられた事件です。

現在も解決していません…
ソシャレン、不動産クラファン、全業者リストです!

タップできる目次
情報の扱い方が生み出した悲劇

トラストレンディング事件とは?
公共事業案件を扱う高利回り業者

トラストレンディングはエーアイトラスト株式会社(現 AI株式会社、以下、エーアイ社)が運営するソーシャルレンディングです。
2016年に運営を開始し、公共事業関連の案件を扱う唯一の業者でした。
10%を超える高利回りで人気を集めた業者です。

プチ解説 案件とは?
プチ解説 業者とは?
プチ解説 利回りとは?

逆に怪しくない?
公共事業で安全性をアピール
そう思うかもしれませんが、トラストレンディングの案件の多くは安心感のある公共事業関連のもの。
例えば、新東名案件の借り手は「国土交通省とNEXCO中日本が発注する工事」を下請けする建設会社でした。

プチ解説 借り手とは?

発注元が国交省。
他の案件でも説明文には信頼性が高いと思わせるキーワードの数々。
今回、本借入人は元請負会社を経由して、国土交通省及びNEXCO東日本を発注者とする東京外かく環状道路関係の工事を受注しております。
放射性物質を取除く技術は、政府の基本方針に沿った内容で且つ放射性廃棄物の処分・処理に関する専門機関(原子力関連の公益財団法人)により有効性と実現性が充分に検証された方式が採用されます。
案件説明の画像には省庁や地方自治体、大手企業などがズラリ。


公共事業を前面に出すことで安全性をアピールしていたのです。

安全だと思っちゃうかも。
天下り官僚で信用を演出
さらにエーアイ社の取締役には多くの天下り官僚が就任していました。
財務省に国交省、防衛省まで。(2018年5月当時)
| 役職 | 氏名 | 出身 |
|---|---|---|
| 専務取締役 | 山田 某氏 | 財務省 |
| 取締役 | 川崎 某氏 | 財務省 |
| 取締役 | 古谷 某氏 | 財務省 |
| 取締役 | 山本 某氏 | 国土交通省 |
| 取締役 | 渡邉 某氏 | 防衛省 |
| 監査役 | 園田 某氏 | 財務省 |
元官僚が多数在籍しており、省庁と結び付きがあると信用を演出。
「高利回り+公共事業+天下り官僚」で多くの投資家の人気を博し、3千人以上の投資家が出資したのです。
プチ解説 出資とは?
信用は虚像だった
しかし、トラストレンディングが演出した信用は虚像でした。
公共事業案件の多くが架空のものだったのです。
上述の新東名案件では借り手の建設業者が工事を受注した事実はなし。

福島原発関連の除染案件では、環境省が発注元とされる除染事業自体が存在せず。

しかしながら、高速道路事業については本借入人Aにおいて工事受注がされていないこと、除染事業については事業自体が存在しないことが検査において認められている。(2019年3月8日 関東財務局による行政処分発表)
さらに、2018年10月に取締役に就任した財務省出身の山本幸雄氏が、架空案件に絡み15.8億円を着服していた事実まで発覚したのです。
その結果、平成29年2月から同30年11月までの募集総額約52億円のうち、少なくとも約15億8千万円が、各ファンドの案件紹介等に中心的な役割を果たしていた山本幸雄取締役が実質的に支配する法人に流出していた。(2019年3月8日 関東財務局による行政処分発表)

ひどい…
営業停止処分に
ほとんど詐欺と言ってもよい極めて悪質な内容。
2018年12月に金融庁から業務停止命令、翌年3月には第二種金融商品取引業の登録取消の行政処分が下り、トラストレンディングは事実上の営業停止状態に至りました。
2.このため、本日、当社に対し、下記(1)については金融商品取引法第52条第1項の規定に基づき、下記(2)については同法第51条の規定に基づき、以下の行政処分を行った。
(1)登録取消し
関東財務局長(金商)第2601号の登録を取り消す。(2019年3月8日 関東財務局による行政処分発表)
投資家の被害は52億円
一連のトラブルで償還遅延となった投資家の元本は総額52億円に上ります。
被害に遭った投資家140人超が起こした訴訟では、2025年1月に投資家勝訴の判決が。
しかし、被告14人が控訴したため、事件はまだ終わっていません。
仮に高裁、最高裁で投資家が勝訴しても、エーアイ社が52億円を弁済できる可能性は極めて低いでしょう。
プチ解説 元本とは?

投資家の全損で終わり…
いかにもな信用にはウラがある
ここからはトラストレンディング事件から得られる教訓を考えます
公共事業+天下り官僚の安心感
なぜ投資家はトラストレンディングで投資してしまったのか?
最も大きかったのは公共事業+天下り官僚の安心感でしょう。
公共事業だし、国交省やNEXCOも関与しているし、しかも天下り官僚が取締役だし。

信用して大丈夫と思い投資してしまった。
当時の掲示板やSNSではそういう声が少なからず見られました。
集客のための演出だった
しかし、実際には案件の多くが架空のものであったことは上述の通りです。
公共事業は存在せず、天下り官僚の多くはお飾りだった。
被告となった天下り官僚の一人は、裁判で「実務には関わっていなかった」と供述しています。

安心アピールに利用された。
「公共事業+天下り官僚」は投資家を安心させるための演出だった。
それに投資家がまんまと騙されてしまったのです。
業者のアピールを真に受けていないか?
そんな安易な手に引っかかってバカだなぁと思うかもしれません。
しかし、我々も同じようなことをしてはいないでしょうか?
売買契約済み、価値の高い土地、蓄電池は国の注力分野。
業者のアピールをそのまま真に受けていませんか?
もし真に受けているのであれば、次の被害者はあなたかもしれません。
常に疑ってかかる姿勢を
多くの業者はマジメに運営をしていますが、悪意のある業者がいる可能性、今後出てくる可能性はゼロではないです。
いかにもな信用を演出して引っ掛けにくるかもしれない。
業者のアピールは事実なのか?
常に疑ってかかる姿勢が必要でしょう。
性善説では資産は守れません。

真に受けたらダメです!
情報を自分に都合よく使っていないか?
もう一つ得られる教訓は、自分が望む結論のために情報を都合良く使っていないかです。
高利回り業者への不安感
トラストレンディングが公共事業案件を多数出していたのは2018年です。
その前年にはみんなのクレジット事件、年明けにはラッキーバンク事件が起きていました。

6月にはグリーンインフラレンディング事件が発覚、翌7月にはmaneoマーケットに行政処分が。

高利回り業者で多発する事件。
同じく高利回りのトラストレンディングに不安を感じる投資家も少なくなかったでしょう。
話が出来すぎじゃないか?
また、トラストレンディングの「公共事業+天下り官僚」は話が出来すぎとも言えます。
公共事業だから安心って、ベタすぎますよね。

それに、天下り官僚が公共事業を引っ張ってこられるのか?
そんな大物官僚を一介のソシャレン業者が何人もスカウトできるのか?

言われてみれば…
高利回り業者で事件が連発する中での出来すぎた話。
もしかしたらヤバイのでは?と感じた投資家もいたはずです。
情報を自分に都合よく使った
そんな投資家を悩ませたのが「ヤバイ」と「儲けたい」の葛藤でした。
ヤバイと感じつつも、利回り10%オーバーは美味しい、儲けたい。
そこで、公共事業だから大丈夫、官僚が天下りしているから信用できると不安を打ち消した。
儲けたい自分を正当化するために情報を使った。
しかし実際は、ヤバイと感じた自分が正解だった。
情報の扱い方が招いた悲劇といえると思うのです。
結論ありきで情報を扱っていないか?
同じようなことを我々もしていないでしょうか?
高利回りに投資したい、その投資を肯定する情報が欲しい。
その前提で案件詳細を見ていないか?
この業者が好き、この業者は間違いなく良い業者だ。
その色眼鏡で業者のアピールを見ていないか?
高利回りに投資する、この業者は良い。
結論ありき、結論前提で情報に接していないでしょうか?

言われてみれば。
結論ありきは投資に限らない
結論ありきで情報に接するのは投資に限りません。
高市支持だから高市首相に関する情報はすべて肯定、逆にアンチ高市だからすべて否定。
どちらも最初から結論ありきですよね。
トランプ大統領の横で飛び跳ねたシーンを評価する声がありましたが。
同じことを岸田、石破両氏がやっていたらフルボッコだったでしょう。
「佳子さまがAと言ってたよ」と言うと、猛烈に秋篠宮家批判。
しかし「あ、ごめん、Aと言ったの愛子さまだった」と言われた途端に、苦虫を噛み潰したような顔になるのではないでしょうか?
我々は日々無意識のうちに、結論ありきで情報に接しているのです。
情報の扱い方に注意
業者の出す情報をすべて真に受けたらダメ。
結論ありきで情報を自分に都合よく使ってはいけない。
情報に対しては常にフラットに冷徹に感情を排して接するべきです。
情報の扱いを誤った時、我々はトラストレンディング犠牲者の二の舞いになります。
情報化社会だからこそ、情報の扱い方に注意しましょう。

諸刃の剣です!


















コメント